セイコーが世界に飛躍する契機となった伝説のモデル『キングセイコー』の現在

文：名畑政治 / Text: Nabata Masaharu

2021年、セイコー創業140周年を記念して、1965年に登場した伝説の高級ウォッチ『キングセイコー “KSK”』が復活した。セイコーが次々と新たな製品を開発する中、威風堂々の意匠と高い精度、秒針停止機構など近代的な機能を備えたキングセイコーの二代目モデル『KSK』は、その人気を決定的なものとし、セイコーが世界に羽ばたく契機となった記念碑的なコレクション。

その伝説のモデル『KSK』の血統を受け継ぐキングセイコー『SDKS』のカラー文字板コレクションが今、注目である。

国産時計を牽引しセイコーの独自性を確立した
『キングセイコー』が現代の技術で復活

1961年に誕生した『キングセイコー（KS）』は、『グランドセイコー（GS）』と並ぶセイコーを代表する高級ウォッチであり、2021年にセイコーの創業140周年、そしてキングセイコーの誕生60周年を記念して、1965年に登場した当時『KSK』と呼ばれたキングセイコー二代目モデルがほぼ原型に近いかたちで復刻された。

（1965年に発売されたオリジナルモデルキングセイコー “KSK”）

1960年代、セイコーは『初代150ｍダイバーズ』（1965年）や『クオーツアストロン』（1969年）、『自動巻きクロノグラフ』（1969年）などを次々開発。その中で二代目キングセイコーは風格あるデザインや力強いディテールによって、セイコーの独自性を主張し、同時に世界に向けて飛躍するきっかけとなった重要なモデルである。

その劇的な復活から約3年、キングセイコーは今やセイコーを代表する高級ウォッチ・コレクションとして豊富なラインナップを展開するまでに成長。中でもデザイン的にも機能的にも充実した内容を備えるのが『SDKS』である。

1965年の『KSK』をモチーフにリデザインされた『SDKS』には、今回紹介するチャコールブラック、インディゴブルー、オリーブグリーンという3種類のダイアル・バリエーションなどがある。

それは『KSK』が誕生した1960～70年代の文化的な背景を考慮したものであり、その文字板には縦方向にヘアライン（筋目加工）を入れることで、経年変化による味わいが表現されている。

搭載されるムーブメントは、新しい機械式自動巻きの「Cal.6R55」。
コンパクトな自動巻き機構を装備しつつ、3日間（約72時間）という長いパワーリザーブを実現し、ビジネスからカジュアルまで、多彩なライフスタイルにフィットする高い機能を装備している。　また、新開発のダブルレバー式簡易着脱レバーを採用することで、標準装備されたメタルブレスレットを簡単に着脱可能。これに別売りの専用レザーストラップを組み合わせることで、簡単手頃に雰囲気を変えて楽しむことができるのも、このモデルの大きなメリットである。

文字板やインデックス、針もオリジナルの『KSK』のスタイルを踏襲しつつ、より立体的で堂々とした意匠に仕上げられている。特に注目は12時位置に植えられた太い植字のインデックス。これも『KSK』から受け継いだ個性的な形状であり、上面に施されたキラキラと輝くライターカットがキングセイコーの伝統と個性を際立たせる。

また、キングセイコーの象徴である盾をモチーフにしたブランドマークもモダンに刷新されて復活。リューズや裏蓋にそれは刻まれている。

大胆な多面カットが施されたケースでは、鏡面仕上げとヘアライン仕上げを組み合わせてシャープな質感を表現。1965年のオリジナル『KSK』がケース直径36.7ｍｍであるのに対し、『SDKS』は38.3ｍｍと1.4ｍｍ拡大されている。ケース厚はオリジナルが手巻きで10.9ｍｍであるのに対し、わずか0.8ｍｍ増の11.7ｍｍとロングパワーリザーブの自動巻きとしては薄く仕上げられており、快適な装着感を堪能できる。

1960年代のキングセイコーへのオマージュを具現化したフラットな多列ブレスレットを新開発し各モデルに装着されている。

このブレスレットもケースと同様に鏡面とヘアラインに仕上げを使い分けることによってダイナミックな光の躍動感とシャープなアピアランスを実現している。

これに加え、多彩な専用レザーストラップが用意されており、ライフスタイルやシーンに合わせてブレスレットやストラップを交換して楽しむことができる。